いっぺん廻ってみ?

たりないものばかり

髑髏城の七人season花 4/19感想(ネタバレ有)

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2017.4.19(水) 18:30
IHIステージアラウンド東京/ 1列目センブロ最上手
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 偶然にも前日が鳥の制作発表になったのでそれも行って、次の日は花2回目だったのですが、なんだこの髑髏城全部乗せメガ盛り丼…供給に溺れてしまう…。
 今回の目標は、花における天魔と蘭の答えを自分なりに出すこと。結論から言うとまとまったのですが、人生初新感線最前席は致死量高すぎました。花髑髏随一のスーパーヒーロー・沙霧様のおかげでなんとか還していただいた感ある。花でこれなら、もし罷り間違って鳥で前列来たらその日が命日。(オタクは軽率に死ぬ)(大丈夫だ、来ない来ない)
 間近で見れたので、衣装ガン見していたら、着流しの下にステテコ履いてるという蘭兵衛さんの秘密を知ってしまいました。意地でも蘭兵衛さんのおみ足を見せないいのうえひでのり先生。強い意志を感じる。


・今回の天魔王と蘭兵衛。
 花は話がわかりやすくオーソドックスに整理されてる分、天も蘭も思考回路が簡潔になってるのだなというのが結論。見たままを感じ取れば良いかな、と。ワカみたいに行間を読んで複雑な心理描写を慮らなければならないとか、そういう必要はないみたい。考察とかこちらが自己満でやってることなんですがね(翻って、考察しなければ話に納得がいかないほどワカがガバガバだったとも言う)。

 今回の天魔王って、初めに捨蘭と対峙する時から殿の仮面を投げ捨てることができるほど、仮面に愛着ないんですよ。自らの野望を叶えるため、蘭を利用するし側近ですら切り捨てられるし殿をも利用できる。年下だから甘えることも知っている。髑髏城シリーズでは1位2位を争える狡猾な天魔像じゃないかな。そういう意味ではアカ古田版に近いかもしれない。ワカで見え隠れしていた憐憫の情なんてもってのほか、策略に長け悪徳を好み、外見の傷ですら自らの誉と化すことができる強者。
 くどきのシーンで蘭におべっか使う時の「1番信じていないのは兄者自身だろうが!」という台詞、初日は「お前自身だろうが!」だったんですが(戯曲もお前呼び)、ここ兄者呼びで正解。蘭を操りたい時は意識して兄者呼びしてるし、逆に蘭を我が物に扱いたい時は命令口調でお前呼びも蘭丸呼びもする。この辺り、初日よりわかりやすく整理されていた印象。

 一方の蘭兵衛はずっと苦しんでいる。特に前半は一太刀一太刀に人を殺す苦しみと命の重みと哀しみが伝わる。「武士を捨て意地を捨て昔を捨て」とかなんとか言いながら、未だ刀を持ってることを悔いているし、いろんなものを抱え込んでしまっている。だから、天魔のいざないで元の姿を取り戻した時、張り詰めた糸が切れ、やっと戻れて良かったねと思ってしまうほど。結局蘭も天魔を利用したようなもの。
 その後も、それまでに溜め込んだものをドロドロと舞台上に垂れ流してゆく。蘭丸が重い太刀筋を見せる度、乱世に漂う口惜しい膿を撒き散らしているような。荒武者隊を「クズ虫が」と罵る蘭丸に初めは驚いたけど、もしかしてあれは自分自身に言ってるのかもしれない(そしてクズはお前だと言いたい)。
それでも花髑髏の世界の蘭丸は、最後まで「お前だけでも逃げろ」と天魔に言えてしまうほど根が優しい。そして「所詮、外道だ」という相手は、太夫ではなく捨之介で。外道な自分を笑ってくれよと言わんばかりの自嘲的に微笑んでいた、どこまでも現実的で正気で、優しくて優しくて悲しい人。かな。
 ところで初日より無界襲撃シーンでフラフラ度が増した気がするけれど、気のせいかも。フラフラあった方が過去をも断ち切ってる形で私は好きです。

 口移しなんですが、花はなくて良かったのではないかな。オヤクソクになってしまっているなら仕方ないけれど、あれだけ自分で考えて動いてる蘭に口移しすることで逆にぶれちゃったところあるような。花髑髏のエグさって、ああいう厨二病的言動を大の大人がやってることだと思うんですけど、無念の集合体のような蘭には、今更口移しとかそういう軽いことで落ちる精神ではなさそう。うーん。要再考。


・ヤマコーとソンハさん
 山本蘭兵衛は近くで見るに限る。
 今更もう、眼前でカンクロウナカムラが褌一丁で走り回っててもタイチサオトメが超高速殺陣しててもミライモリヤマがほぼ全裸でパフォーマンスしててもタツヤフジワラが脱ぎ始めても変にドキドキしないけど(興奮はするけど)、半径1メートル以内で眉根よせてじっと苦悩するヤマコーを見るのはさすがに、初めての経験で、うん。苦しい。
 感情の変化を、些細な顔の表情で繊細に表現していたの、あれは近くで見なきゃわからない。登場シーンから醸し出している色街の主人としての貫禄、天魔に昔の名と呼ばれてから城に向かうまでの自責の念と過去と現在に揺らぐ感情の揺れ、昔の姿に戻ってからの怨念。あんなに広い劇場の遠くまでは伝わらないかもしれないけど、それがわかった時、やっと花の蘭兵衛がいかなる存在なのかわかったような気がした。特に前半の抑えた立ち回りと押しつけたようなイントネーションが、自らを縛り付けているようで哀しかった。殺陣も蘭兵衛と蘭丸でだいぶ変えてるし、ついでにいうと、立ち回る時左手広げて突っ張るのめっちゃ可愛いんですけどあれは癖か何かなんですか。

ソンハさん。
 は、とにかく台詞回しが流暢でどタイプ。そりゃ歌上手い筈だよね、と思わせる滑らかで心地いい声音とデュナーミクの巧みさにうっとりしてしまう。観劇し終わって何日経っても耳に揺蕩っていたのがソンハさんの声。とてもとても美しかった。
無界襲撃時のおにぎりむしゃむしゃからの指ペロリんは卑怯だなあ。ワカ天魔も似たようなことしてたけど、より爬虫類っぽくなって、なんというかゴジラにダースベイダーの仮面つけたようなイメージ。
 今回、蘭がドンと構えるタイプで、天も初めはドシンとしていたけど、最後の種明かしからピョンピョン跳ねるあれは卑怯だ…。背が小さいのに誰よりも異質で大きく…は見えなかったな、流石に無界襲撃あたりは(笑)


他にざっと感想を。
・捨之介(@ちょっとお疲れな小栗さん)
 「今度は必ず間に合わせる」
 「今度は」なんですよねえ…。二幕で沙霧に今まで何度も見なくていい血を見てきた過去を言っていましたが、この「今度は」にワカでの後悔も入ってそうだとか妄想し始める残念なワカ脳でごめんなさい。ループ好きなんです。ワカでは「必ず間に合わせる」だけだったから。
 それから花の捨はちょくちょく懐手をしますね。ワカではしてない。あれをやられるとどんな人でも惚れてしまう癖があるから困りました。生足よりあの所作の方が殺傷能力高いです。花蘭は一度もしなかったなあ、さすが武士。
いずれ捨と蘭と天の関係性もきちんとまとめたいな。

・沙霧
 花髑髏の大正義。あんな地味な衣装充てがわれてるのにそれが気にならないスーパーヒーローっぷり尊すぎて拝む。神様仏様沙霧様。
 んもーーーほんと沙霧がきちんと機能してるだけで花髑髏大成功してるから今度から菜名ちゃん応援する。間近で見るとほんとちっちゃくて可愛くてメイクがすごい美人さんだった…可愛い…。

・太夫
 りょうさんの声がめーーーっちゃ好き…こんなに太夫が嵌るなんて思わなかったしスレンダー美人に重火器持たせる絵面が最高に大正解で。
 あとカテコ、太夫姿でキャピッてジャンプするのほんと可愛いんですけど…また新感線出て欲しいです…女性陣の可愛さがとにかく魅力的でした。

・最前マジック強過ぎたので機構とか演出とかまた次に。目の前で熊倉さんや南さんや学さん(おなじみアンサンブルさん)が細かい芝居してるのがじっくり見れて幸せでした。大楽まで体に気を付けて頑張ってください。

・メタルさんの衣装が地味にとてもエロい。隠れたお尻に隈取の刺青を入れてる。